先日九州の産業革命遺産を訪れた感想を
連載いたしております産経新聞に書きました。
10月21日朝刊掲載分です。
「お節早期受付」のCMを見て、はっとしました。いつの間にか今年も残すところ2カ月半ですね! 10月に入ってからも、ラグビー日本代表の大健闘、日本人のノーベル賞受賞などうれしいニュースが重なるのは何よりです。
思い起こせば、7月頃のめでたいニュースといえば、「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録でした! すっかり記憶の遠くに押されたニュースでしょうか(笑)。登録された遺産のほとんどがある九州を訪ねてきました。
特に有名なのが軍艦島です。台風の接近で島に渡ることはできませんでしたが、長崎市沖に見えるまさに軍艦の形をした島は、「不夜城」と言われ、夜中もこうこうと明かりが絶えなかったそう。良質な石炭が採れたことから一時、人口密度は当時の東京の9倍とも! 労働力が島外に出ないよう、映画館やキャバレー、パチンコなどをそろえ、栄華を極めた島だったと、元炭鉱マンのガイドさんに教えてもらいました。掘った深さは、なんと約千㍍! 豊かさを求めた人々の勢いを感じます。
一方、万田坑(熊本県荒尾市)では、炭鉱マンの過酷な労働環境を実感できました。1度に25人を乗せて下ろしていたというゲージは、その名の通り、現代人にはおりにしか見えず、命がけの作業だったことを痛感。戦争で男手が足りない時は、女性や馬も炭鉱に降りたそうです。当時の事故でいまだに後遺症と闘っている方がいらっしゃることもガイドさんのお話を聞くまで知りませんでした。
世界文化遺産登録をただ祝うだけでなく、繁栄を支えた人々に今一度思いをはせるのが、日々豊かさを享受する私たちの務めかもしれません。驚くほど速く時間が過ぎ記憶はどんどん上書きされますが、記憶に留めておく努力も年々必要になりますね。